2011/06/04

Crusaders

咲かすことのない向日葵の種が
雪原に沈み込んでゆく
私はその夕暮れを研ぎすまします
 それは煙となって消えてしまって、
 メトロノームが金属音を ひび割れのする方角に おくってゆきます

杉林の向こう側では
白く浸かった蜜蜂の群れ
私は記憶を震わせて耳をすまします
 鯨の亡骸に蜘蛛が巣を張り巡らそうと、
 君の残した紙片は 雪の形にして ちぎり取ってゆきます

その海岸線のどこかに私たちは座っていました
寄り添うようにして私たちは終わりを見舞って
雪にとけてしまった向日葵の光景でした
 黒く流れてゆく鉄が腕と腕とを、
 指をからませることなく二人を 身体のなかに うずめてゆきます

いつしか、空が水を敷き詰めた舗道に
肌を通りすぎてゆく水松と 君の残した可視的な何か
雪は夕焼けをその末端にすみわけてゆきます
 水際に脚を焼かれてしまった蜘蛛の巣の震動と、
 私の体温が蜜蝋に その姿態を すましていきます

向かい合う息を凍わせながら、それでも私たちは嬉しかった
咲くことのない花の終わりに焔をうつして
私たちは白くひび割れてゆく夕暮れの光景でした
 二人の指を引き離す海岸線の 青の深淵
 紙片がそこに 浸されるようにして

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