雨音がワルツを組み立てて幻想が終わる。
複数形になって私たちは眠る。
鏡に写る、一瞬の永遠をめぐる、
木星の輪をつたって落ちてゆく。
砂浜の白い、海の切れるところまで。
私は人魚じゃない。
木陰のもとで私たちは目を覚ます。
陽の光に静かな風の交わるところに美しさがある。
穏やかに、髪が木葉の苦しみを掴みあげる。
砕けちる音に私たちは笑いあった。
素足を投げ出して指先からテントウムシが飛んでいった。
何が穏やかだったのだろう。
冷たくなった私は砂漠の冬を歩く。
親指の爪までの温度を私たちは雪にほどこしていたかった。
夜の、雨が埋もれた枯木を砂へと分け与えていた。分前を、
施しを知らない天使たちは放課後のチャイムの音を知らない。
窓に流れる雨粒が丸まって繭になる。
私に羽があったなら、
眼をつむる一瞬だけ、私たちは慈悲深い蛾の女王になる。
あの夏の紅海を越えて、身体に乾く塩を
鱗粉に換えて私は飛んでゆく。
魚鱗に微かに散る海の飛沫こそ私の誇り。
瞬きほどの想い出が井戸の底に積り、
雪と交わった私たちは寄り添い会えぬまま眠る。
そうやって私たちは幻想となって終わる。
雨の音など聞こえていなかった、秋に。
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