2011/06/04

“Astaire=Rogers”

虹が、架かるのかしら?
 この言葉の夜に?
 あの朝の次の、花冠の形態。
うたかたのなかの、太陽。
そもそも、光などなかったのだね。
この始まりを欠いた重力の奥。
 薔薇の祈りが、沈香のものであるように。
何もないもののほうが、ここでは多くあるのよ。
 雪に閉ざされてしまった石の葉隅。
流されていた血流の色。音差を辿りゆく澪。
 結晶が揺らめいていた、堕ちゆくSing。
もう焼きつくされてしまった。
 嵐に卵を棄てて逃げてくる鳥、
枯葉のシィクセスのように。
もう誰も覚えていないのね。
白昼の肉体の連動。シルクを振りほどいて。
 1,2,3,であった血液。
そこに始まりなどなかったのだよ。
 無色の森の遠近法。並木道を抜けて、
そこで再び得られるはずだった言葉。
虹など架かっていなかったのね。
口づけ、に触れる大気。雪の蒸発してしまった、
石に咲いているのだね。この遅れが
閉ざされてしまって、粒子の中に。
 水の中に咲いていた水なのよ。
足音と足音の震える領域。響く弦の器官。
 穂羽で飾られた、このスクリーン。
鼓動さえも、満たされることのなかった。
 そこには言葉などなかったね。“Cheek to Cheek”
静かな夜のための連帯。視線の、折り重なる架線。
 イクオルの等符号で結ばれた、血脈。
でも、結ばれていたのね?
手をつないだ、手を離した。無色のイマージュ。
 無限の目の開くところの、地平。
ここで踊りませんこと? あなたと。
 花冠から、この無垢の夜まで。
澪に閉ざされてしまった、口づけを。
 でも、わからないのだね。
シルクに触れていた、その指を辿って、
 かつてあったことを、廻っていく。
でも、わからないのね。
 折り目の異なる次元。眠らない魂のための、自存する夜。
頬を寄せあった。鼓動さえも、あなたと。
記憶の、真空。水辺の散っていくところ。
 窓辺に手をつなぎあった。“Cheek to Cheek”
起こったこともないことが、廻っていくのよ。
 降る雪に被われてしまった、無垢の輪郭。
言葉に見放されて、忘れてしまうことを。
 吐息の白の連動。半身の薔薇の、音差。
ここに、歌声があったね。
 その、一人称の生であったイマージュ。
灼かれた肉体の、震えた器官。
 言葉などなかったのよ。
失われた粒子のための、運動性。
 夜ごとに出会った、ある花冠のスクリーン。
肉体などなかったのだね。
 何もないもののほうが、ここでは多くあるように。
重力を結びつけて、足音と足音のたどる軌道。
次元を溯る、花弁に似た交感神経の連なり。
 抱きしめあっていたように。一人称の生のなかで。
再び踊りませんか? もう、ここで。
 ステップを踏んで、言葉を。残された骨を摘むように。
かつての視線の等号。無垢の半身=半身。
 羽をこうして落としながら、廻りゆく夜。
あなたが踊っていた日々も、言葉も。
 突如づけられた、太陽の、無限の呼びかけ。
それが始まりではなかった、言葉。
 なにも起こらなかったことそのものの、体系。
踊っていたのですね。 すでに、そこで。
 水奥に沈みこんだ、吐息の形態。あなたの輪郭。
肉体に見放された記憶の、廻っていくこと。
 黒と白の粒子の、朽ち放たれた領域。
あなたを覚えているのかしら?
蝶番の異なる大陸。複数形であった空たち。
 鼓動さえ、満たされることはなかった。
かつてあった視線のための、無垢の統合。
 遠近の森を閉ざしあう、血脈の連帯。
あなたの、踊っていること。
 終わりのない1,2,3,であったイマージュ。
降る雪に被われて、口づけではなかった半身=半身。
 あなたと、再び得られるはずだった言葉。
折り重なった花冠のための、渚。
 重力の異なった、この夜の傍ら。
かつて起こったかもしれないことの、黒と白の追憶。堕ちゆく音差。
 虹は、架かっていたのかしらね?
夜ごとに失われた魂のための、運動性。
イクオルの等符号で結ばれた、祈り。
 すべては、ここで起こっていたことだったのだよ。
秩序づけられた、粒子の氾濫。
 白光の先で綴られた、水の中に咲く形態。
いなくなってしまった、虹彩の記憶。
 雨は、降っていたのですね?
太陽の、重みを手放してしまったこと。
 溶けた声の浸み込ませていた、かつて無垢だったものの土塊。
この外で震えていた、胸の弦の器官。
起こってしまったことでさえ、廻っているのね。
(逃れ去っていた一人称の重力=沈黙。)
再び踊りませんか? それでも、ここで。
 複数形の空の、閉ざされてしまったこと。
黒と白であった、手と羽のイマージュ。
 ワルツを廻るように、あなたと。
異なる大陸を渡るシンコペーション。
 分割された原子の取り戻される色彩。
太陽の、咲き乱れていたこと。
 言葉とともに、口づけさえも?
ここには歌が、あったわね。
 放置された、輪郭のあいまいな肢体。
 あなたが、触れあったこと。
言葉が、あなたを廻り合わせるのね。
“You Were Never Lovelier”
 ステップを踏んで、鼓動を。窓辺には、花を。
抱きしめあっていたように。一人称の夜のなかで。
 暖かい頬をよせて、並木の向こうへ。

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